冬の大雪や停電は、日常生活に大きな支障をもたらします。特に在宅で高齢者を介護しているご家庭や、医療・介護機器を使用している方にとっては、命に直結する問題になりかねません。
実際に冬季災害では、
- 寒さによる体調悪化や低体温症
- 停電による医療・介護機器の停止
- 交通遮断による孤立
といったリスクが重なりやすく、平時よりも判断や対応が遅れがちになります。
「もし停電したら、この家で本当に大丈夫だろうか」 「暖房や医療機器が止まったら、どうすればいい?」
この記事では、そのような不安を抱えている方に向けて、大雪・停電時に介護家庭が直面しやすいリスクと、今のうちに準備しておくべき冬の防災チェックリストを、 高齢者本人・家族介護者の両方の視点から具体的に解説します。
「何から手をつければいいかわからない」状態を抜け出し、 “今できる備え”を一緒に確認していきましょう。
大雪・停電時に介護家庭で起こりやすいリスク

① 暖房停止による低体温・ヒートショック
停電によりエアコンや電気ストーブが使えなくなると、室温は急激に低下します。特に夜間や早朝は冷え込みが強く、 高齢者は体温調節機能が低下しているため、低体温症や血圧変動によるヒートショックのリスクが高まります。
低体温症は、深部体温が35℃以下になると発症リスクが高まるとされ、高齢者は寒さを感じにくいため発見が遅れがちです。 またヒートショックは、急激な温度差によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす原因となることがあります。
「寒くない」と話していても、手足が冷たい、震えがある、反応が鈍いといった変化が見られる場合は、 早めに保温や周囲への相談を行うことが重要です。
② 医療・介護機器が使えなくなる
在宅酸素、電動介護ベッド、吸引器、電動車いすなど、 電力を必要とする機器が停止すると、生命維持や日常介護が困難になるケースがあります。
特に在宅医療を受けている場合、停電の長期化は大きなリスクです。 医療機器にはそれぞれ使用可能な非常電源時間が定められていることが多く、 事前に「何時間使えるのか」「どの機器を優先するのか」を把握しておく必要があります。
自治体によっては、在宅医療機器使用者を対象とした要配慮者名簿・優先復旧制度を設けている場合もあるため、 平時のうちに確認しておきましょう。
③ 物資不足・孤立
大雪で道路が寸断されると、 ・食料や介護用品が届かない ・訪問介護やデイサービスが中止になる ・家族や支援者が来られなくなる といった「孤立状態」に陥る可能性があります。
特に一人暮らしや老老介護の家庭では、 「助けを呼びたくても呼べない」状況になりやすいため、 日頃から周囲とのつながりを作っておくことが重要です。
④ トイレ・衛生環境の悪化
水道管凍結や断水が起こると、トイレや清潔保持が難しくなります。 排泄ケアが不十分になることで、感染症や皮膚トラブルにつながる恐れもあります。
特に高齢者は皮膚が弱く、 長時間の湿潤や汚染が褥瘡(床ずれ)の原因になるため、 災害時でもできる範囲で清潔を保つ工夫が必要です。
【チェックリスト】大雪・停電に備える冬の介護防災対策

① 暖房・防寒対策の備え
| 優先度 | 項目 | 補足・確認ポイント |
|---|---|---|
| ★★★ | 電気を使わない暖房器具(カセットガスストーブ等) | 使用方法・換気方法を事前に確認 |
| ★★★ | カセットガスの予備(3〜7日分) | 1日あたりの使用本数を想定 |
| ★★☆ | 毛布・厚手の掛け布団・アルミシート | 体温保持・重ね使いが有効 |
| ★★☆ | 重ね着しやすい衣類、レッグウォーマー | 脱ぎ着しやすさを重視 |
| ★☆☆ | 室内用の防寒帽子・手袋 | 熱が逃げやすい頭部を保温 |
※火器使用時は換気と一酸化炭素中毒対策を必ず行いましょう。
② 食事・水分・栄養の備え
| 優先度 | 項目 | 補足・確認ポイント |
| ★★★ | 飲料水(1人1日3L×最低3日分) | 薬の服用・調理用も考慮 |
| ★★★ | 介護向け非常食(おかゆ・ムース食など) | 噛む力・嚥下機能に合わせる |
| ★★☆ | 栄養補助食品(ゼリー飲料等) | 食欲低下時の代替手段 |
| ★★☆ | カセットコンロ・ポータブル調理器具 | ガス残量・点火確認 |
| ★☆☆ | 使い捨て食器・ウェットティッシュ | 断水時の衛生対策 |
高齢者は寒さで食欲・水分摂取量が低下しやすいため、 意識的な水分・栄養補給が重要です。
③ 排泄・清潔ケア用品
| 優先度 | 項目 | 補足・確認ポイント |
| ★★★ | 紙おむつ・尿取りパッド(多め) | 配達停止を想定し多めに備蓄 |
| ★★★ | 簡易トイレ・凝固剤 | 夜間・断水時に特に有効 |
| ★★☆ | 使い捨て手袋・おしり拭き | 感染予防・皮膚保護 |
| ★★☆ | ドライシャンプー・清拭用タオル | 入浴できない場合に使用 |
| ★☆☆ | ゴミ袋・消臭剤 | 衛生環境悪化を防ぐ |
停電・断水時でも清潔を保つ工夫が、感染予防につながります。
④ 医療・介護機器・薬の備え
| 優先度 | 項目 | 補足・確認ポイント |
| ★★★ | 常用薬(最低1週間分) | 処方日数・使用期限を確認 |
| ★★★ | 医療・介護機器の非常電源 | 稼働時間・充電方法を確認 |
| ★★☆ | お薬手帳のコピー | 紙での保管がおすすめ |
| ★★☆ | 懐中電灯・ヘッドライト | 両手が空くタイプが便利 |
| ★☆☆ | モバイルバッテリー | フル充電を習慣化 |
在宅酸素・吸引器・人工呼吸器などを使用している場合は、
- 停電時にどの時点で自宅対応が限界になるか
- 非常電源が尽きた場合の避難先(福祉避難所・医療機関)
- 主治医・訪問看護・自治体の緊急連絡先
といった「逃げ道」を平時のうちに紙に書いて共有しておくことが重要です。
在宅医療機器使用者は、電力会社・自治体への事前登録や要配慮者名簿への登録により、 停電時の優先対応や支援につながる場合もあります。
⑤ 情報・連絡手段の確保
| 優先度 | 項目 | 補足・確認ポイント |
| ★★★ | スマートフォン・携帯電話 | 充電残量・連絡先確認 |
| ★★★ | 緊急連絡先リスト(紙) | 冷蔵庫など見える場所に |
| ★★☆ | 予備バッテリー・乾電池 | 定期的に動作確認 |
| ★★☆ | ラジオ(手回し・電池式) | 停電時の情報源 |
| ★☆☆ | 近隣支援者・家族の連絡先 | 複数ルートを確保 |
災害時は情報が遮断されやすいため、 複数の情報取得手段を用意することが重要です。
💡 ここで一度、備えを見直してみてください
チェックリストを見て「これ、家にないかも」「足りないかも」と感じたものは、 大雪予報が出てからでは手に入りにくくなることが多いのが現実です。
特に、カセットガス・防寒用品・介護向け非常食・簡易トイレなどは、 毎年のように“売り切れ・品薄”が起こる定番アイテム。
何も起きなければ、それは“無駄な買い物”ではなく「安心を買った証拠」です。 介護が必要なご家庭ほど、 「あの時、準備しておいて本当によかった」と感じる瞬間が必ず訪れます。
特に早めに揃えたい3点
「全部は一度に揃えられない…」という方は、まずはこの3つだけでも確認してください。 介護が必要なご家庭で“後回しにすると困りやすいもの”を厳選しています。
- カセットコンロ・カセットガス
停電時でも温かい食事や飲み物を用意できることは、高齢者の低体温症予防・体調悪化防止に直結します。
※冬はガスボンベが品薄になりやすいため、早めの準備がおすすめです。 - 防寒対策用品(電気不要のもの)
毛布・アルミブランケット・貼るカイロなど。
エアコンが使えない状況では、「重ねて保温できるか」が命を守るポイントになります。 - 介護向け非常食・簡易トイレ
やわらかく食べやすい非常食や、ポータブルトイレ・凝固剤付き簡易トイレは、我慢や無理をさせない介護のために欠かせません。
「使わなかったらどうしよう」と迷うより、「何も起きなかったね」と言える安心を先に用意しておくことが、 冬の介護防災ではいちばん大切です。
大雪・停電の予報が出たらやること

災害時は、その場の判断が難しくなります。 あらかじめ「いつ・何をするか」を決めておくことで、落ち着いて行動しやすくなります。
大雪・寒波の予報が出たとき
- モバイルバッテリー・医療機器の充電を開始する
- 食料・水・介護用品の在庫を確認する
- 暖房器具・防寒用品がすぐ使える状態か確認する
前日までにやっておくこと
- 買い出し・処方薬の受け取りを済ませる
- 停電時の生活動線(トイレ・移動・照明)を確認
- 家族・支援者と連絡方法を共有する
大雪・停電が発生した当日
- 室温・体温を意識的に確認する
- 水分・食事摂取量が減っていないか観察する
- 無理をせず、早めに支援や相談を行う
高齢者本人が意識しておきたいポイント
災害時、高齢者の中には「周りに迷惑をかけたくない」「我慢すれば大丈夫」と感じてしまう方も少なくありません。 しかし、我慢が体調悪化を招き、結果的に大きな支援が必要になるケースもあります。
- 寒くても我慢せず、早めに家族や周囲に相談する
- トイレや水分摂取を我慢しない(脱水・感染予防)
- 体調の変化(寒気・ふらつき・息苦しさ・胸苦しさ)を感じたらすぐ伝える
「助けを求めることも大切な防災行動」です。 命を守る行動を最優先にしましょう。
家族・介護者が事前にやっておきたいこと
介護者自身も、災害時には不安や混乱を感じやすくなります。 そのため、平時のうちに「考えなくても動ける状態」を作っておくことが大切です。
- 大雪・寒波予報が出たら早めに買い出し・備蓄確認
- 訪問介護・デイサービス中止時の代替案(家族対応・自治体支援)を考える
- 停電時の介護動線(夜間トイレ・移動・照明)を事前に確認
- 自治体の避難支援制度・福祉避難所・要配慮者登録制度を把握
事前の想定と共有が、災害時の安心と安全につながります。
まとめ|「冬の備え」が介護する人・される人を守る

大雪や停電は、いつ起こるかわかりません。 しかし、備えておくことで防げるリスクは確実に存在します。
この冬の防災チェックリストを参考に、 ご家庭の介護状況に合わせた備えを見直してみてください。「何も起きなかった」が、何よりの成功です。
⏰ 今週中に一度、備えを確認してみませんか?
大雪・寒波の予報が出てからでは、 防災用品や介護用品はすぐに手に入らなくなることが少なくありません。
- 週末に一度チェックリストを見直す
- 足りないものを1つだけでも買い足す
それだけでも、災害時の安心感は大きく変わります。
「備えよう」と思った“今”が、いちばん動きやすいタイミングです。 この冬を、少しでも安心して乗り切る準備を始めておきましょう。





