遺言や生前贈与によって特定の相続人が多くの財産を受け取る一方で、他の相続人がほとんど財産を受け取れないケースがあります。こうした不公平を防ぐために定められているのが「遺留分」です。本記事では、遺留分の基礎知識から、よくあるトラブル事例、遺留分侵害額請求の流れまで詳しく解説します。
遺留分とは?

- 定義:法定相続人が最低限確保できる遺産の割合を保証した権利。
- 対象者:配偶者、子ども、直系尊属(親など)。兄弟姉妹には遺留分はありません。
- 割合の目安:
- 配偶者・子がいる場合:相続財産の1/2を遺留分総額として計算。
- 直系尊属のみが相続人の場合:相続財産の1/3
遺留分は「遺産を自由に処分する権利」と「相続人の最低限の保障」のバランスをとる仕組みです。
遺留分侵害額請求とは?
遺留分を侵害された法定相続人が、侵害された分を金銭で請求できる制度です。2019年の民法改正により、従来の「遺留分減殺請求」は廃止され、現在は「遺留分侵害額請求」に一本化されました。
請求できる条件
- 自分に遺留分がある
- 相続財産や生前贈与により、自分の遺留分を下回っている
請求の期限
- 相続開始および遺留分の侵害を知った時から1年以内
- 相続開始から10年以内が最終期限
よくある相続トラブルの事例
事例1:全財産を長男に相続する遺言書
父の遺言書に「全財産を長男に相続させる」と書かれており、長女と次男が何ももらえない。
→ 次男・長女には遺留分侵害額請求権あり。
事例2:生前贈与で次女にマンションを贈与
母が次女にだけ生前にマンションを贈与。他の子は財産なし。
→ 他の子は遺留分が侵害されている可能性が高い。
事例3:相続人に兄弟姉妹しかいない
遺言で全財産が第三者に遺贈されていた。
→ 兄弟姉妹は遺留分権者ではないため請求不可。
請求の流れ
遺留分侵害額請求の手続きは、感情的な対立を避けながら進めることが大切です。以下は、実際に請求を行う際の具体的なステップです。
1. 相続財産の調査
まずは被相続人の遺産全体を把握します。不動産・預金・有価証券だけでなく、過去の生前贈与(10年以内)も対象です。
【確認すべき資料例】
- 預金通帳・残高証明書
- 不動産の登記簿謄本・固定資産税明細
- 贈与契約書や振込履歴
- 相続税の申告書控え(すでに他の相続人が申告している場合) まずは被相続人の遺産全体を把握します。不動産・預金・有価証券だけでなく、過去の生前贈与(10年以内)も対象です。通帳・登記簿・贈与契約書などを確認しましょう。
2. 遺留分の割合と侵害額の算定
※遺留分割合は「法定相続分」に基づき算出します。
遺留分の算定は次のようなステップで行います:
- 遺留分の基礎財産を計算: 被相続人が亡くなった時点の全財産(不動産・預貯金・株式など)に加え、相続開始前10年以内の生前贈与を合計します。
- 遺留分割合を適用: 法定相続人の中で遺留分を持つ人(配偶者・子・直系尊属)に応じて、遺留分の総額を算定します。
- 配偶者・子がいる場合 → 法定相続分の1/2が遺留分
- 直系尊属のみの場合 → 法定相続分の1/3が遺留分
- 個別の遺留分額を算定: 上記の遺留分総額を、各相続人の法定相続割合に応じて按分します。
- 実際の取得額との差を確認: 自分が実際に取得した遺産や贈与分と比べて、遺留分に満たない場合、その差額が「侵害額」となります。
例:
- 相続財産総額:6,000万円
- 遺留分割合(子2人):1/2 → 遺留分総額3,000万円
- 子Aと子Bの遺留分:各1,500万円
- 子Aが遺言で3,500万円相続、子Bが500万円だけの場合 → 子Bは1,000万円の侵害額を請求可能
遺留分の算定は次のようなステップで行います:
- 遺留分の基礎財産を計算: 被相続人が亡くなった時点の全財産(不動産・預貯金・株式など)に加え、相続開始前10年以内の生前贈与を合計します。
- 遺留分割合を適用: 法定相続人の中で遺留分を持つ人(配偶者・子・直系尊属)に応じて、遺留分の総額を算定します。
- 配偶者・子がいる場合 → 法定相続分の1/2が遺留分
- 直系尊属のみの場合 → 法定相続分の1/3が遺留分
- 個別の遺留分額を算定: 上記の遺留分総額を、各相続人の法定相続割合に応じて按分します。
- 実際の取得額との差を確認: 自分が実際に取得した遺産や贈与分と比べて、遺留分に満たない場合、その差額が「侵害額」となります。
例:
- 相続財産総額:6,000万円
- 遺留分割合(子2人):1/2 → 遺留分総額3,000万円
- 子Aと子Bの遺留分:各1,500万円
- 子Aが遺言で3,500万円相続、子Bが500万円だけの場合 → 子Bは1,000万円の侵害額を請求可能 法定相続分に基づいて、自分に認められる遺留分を算出し、実際に受け取った財産との差額(侵害額)を明確にします。
3. 内容証明郵便での請求通知
遺留分が侵害されている場合、まずは相手方に内容証明郵便で請求意思を通知します。支払期限や請求額、振込先なども明記する必要があります。
(※文面サンプルは記事後半「内容証明郵便の雛形」の章にて紹介しています)
【通知を送るタイミング】
- 相続が開始し、遺産や贈与の内容が確定したらすぐに送付。
- 請求には時効(知った日から1年以内)があるため、速やかな行動が必要です。 (※文面サンプルは記事後半「内容証明郵便の雛形」セクションにて紹介しています)
遺留分が侵害されている場合、まずは相手方に内容証明郵便で請求意思を通知します。支払期限や請求額、振込先なども明記する必要があります。
4. 協議・交渉
通知後、相手方と任意の協議を行い、金銭での解決を目指します。感情的な対立を避け、事務的・法的な立場を保つことが重要です。
5. 家庭裁判所での調停・審判
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。それでも解決しなければ、審判に移行し、裁判所の判断によって解決を図ります。
【手続きの補足】
- 調停の申立先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 必要書類:調停申立書・戸籍謄本・相続関係図・財産目録など
- 書式や記入例は家庭裁判所の公式サイトでダウンロード可能です 協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。それでも解決しなければ、審判に移行し、裁判所の判断によって解決を図ります。
弁護士に相談すべきタイミングとは?
遺留分侵害額請求は、相手との関係や金額、感情的な対立の有無によって複雑化することがあります。次のような場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします:
- 相続財産が不明確、または不動産・株式など評価が難しい資産を含むとき
- 他の相続人との関係が悪く、感情的な対立が予想されるとき
- 内容証明郵便の送付を検討しているが文面に自信がないとき
- 相手が請求に応じない、または無視しているとき
- 協議がまとまらず、調停・訴訟を視野に入れる必要があるとき
特に、内容証明を送付する前に一度相談することで、法的に有効かつ戦略的な請求が可能になります。
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あなたは遺留分請求できるかも?チェックリスト
- □ 遺言で自分の名前が一切記載されていない
- □ 他の相続人にだけ生前贈与がされていた
- □ 相続財産に大きな偏りがある
- □ 法定相続人なのに取り分がない
→ 一つでも該当すれば、遺留分侵害額請求を検討してみましょう。
法改正による実務の変化(2019年民法改正)
2019年7月の民法改正により、従来の「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に一本化されました。これにより、実務上も次のような大きな変化が生じています:
- 金銭請求に限定されたことで、相手の財産(不動産や株式など)を直接取り戻すのではなく、金銭での補填が原則になった。
- 不動産共有などによるトラブルを避け、柔軟な解決が可能に。
- 弁護士による内容証明の送付→協議→調停といった、より「現実的な解決手続き」が明確になった。
この法改正により、請求される側の準備や対応も重要になってきています。
内容証明郵便の雛形(遺留分侵害額請求)
以下は、遺留分侵害額請求の際に使用される内容証明郵便の一例です。
令和○年○月○日
○○県○○市○○町○番地○
○○ ○○ 様
○○県○○市○○町○番地○
○○ ○○(請求者名)
件名:遺留分侵害額の請求について
拝啓 貴殿におかれましては、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
さて、令和○年○月○日に被相続人○○○○が死亡し、相続が開始されました。
私○○は、被相続人の○○(例:長男)として相続人に該当しますが、遺言または生前贈与により、法定相続分に基づく遺留分が侵害されていると判断しました。
つきましては、下記金額の支払いを請求いたします。
記
請求金額:○○○万円
支払期限:令和○年○月○日
振込先:○○銀行○○支店 普通○○○○○○○ 名義 ○○○○
本請求に関し、誠意あるご対応をお願い申し上げます。
敬具
※この文書は内容証明郵便として送付いたします。
※実際に送付する際は、相続内容や金額に応じて弁護士にチェックしてもらうことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 遺留分侵害額請求は兄弟にもできる?
→ いいえ。兄弟姉妹には遺留分がありません。
Q. 遺言書があっても請求できる?
→ はい。遺留分を侵害している場合は請求できます。
Q. 生前贈与も対象になりますか?
→ はい。相続開始前10年以内の贈与は遺留分計算に含まれることがあります。
まとめ
遺留分侵害額請求は、法定相続人の権利を守るための大切な手続きです。相続人間のトラブルを防ぎ、公平な相続を実現するためにも、遺留分の仕組みや請求方法を正しく理解しておきましょう。
不安な場合や請求するか迷う場合は、相続に強い弁護士や専門家への相談をおすすめします。
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