遺言は「自分の財産をどのように引き継いでもらうか」を意思表示する大切な書類です。しかし、遺言には種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。遺言がない場合、法定相続に従って分割され、相続人同士でトラブルになるケースも少なくありません。例えば「自宅を誰が引き継ぐか」で兄弟間に争いが起き、裁判に発展した事例もあります。
ここでは、公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の違いを分かりやすく解説し、どの遺言を選ぶべきかの判断基準を紹介します。なお、遺言には主にこの3種類があり、それぞれ使い方や特徴が異なります。本記事では、3つの方式を比較しながら、自分に合った遺言を見つける手助けをします。

遺言がないとどうなる?~よくある相続トラブル~

遺言が残されていない場合、相続は「法定相続分」に基づいて進みます。しかし、相続人同士で財産の分け方に納得できず、感情的な対立を招くケースが多くあります。特に「不動産の分け方」や「介護を担った人の取り分」などが争点になりやすく、兄弟間の関係が悪化したまま修復できないままになることもあります。
📖 実例:「介護をしていた長女に多めに相続させたい」という意向があったものの、遺言がなかったために法定相続通りの分配となり、次女との関係が決裂。数十年続いた姉妹関係が崩れた事例もあります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、最も信頼性と確実性の高い遺言方式です。公証役場で作成されるため、トラブルを防ぎたい人や財産が多い人に向いています。費用や手間はかかりますが、その分だけ安心感が得られる点が特徴です。
特徴
- 公証役場で公証人が作成するため、最も安全性が高い
- 原本は公証役場で保管される
- 偽造や紛失の心配がない
メリット
- 法的効力が最も確実
- 家庭裁判所での検認手続きが不要
- 専門家が関与するため内容が不備になる可能性が低い
デメリット
- 作成時に費用(数万円〜)がかかる
- 証人2名が必要
- 公証役場に出向く手間がある
- 確実に法的効力を残したい人
- 相続財産が多い人
- 相続人同士のトラブルを未然に防ぎたい人
📖 事例:公正証書遺言を残していたことで、相続人同士が争うことなく円滑に遺産分割が進んだケースも多くあります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、費用をかけずに気軽に作成できる遺言方式です。身近でありながら、書式不備や紛失のリスクに注意が必要です。法務局での保管制度を利用すれば、安全性を高めながら利用できます。
特徴
- 遺言者が全文を自筆で書く方式(民法968条)
- 2019年の民法改正以降、一部パソコンでの財産目録作成が認められている
- 2020年から法務局での保管制度が開始
メリット
- 費用がほとんどかからない(用紙代や印紙代程度)
- 気軽に作成・修正できる
- 誰にも知られずに書ける
デメリット
- 書式不備により無効になるリスクがある
- 紛失や改ざんの危険がある
- 法務局に保管しない場合は家庭裁判所の検認が必要
- 費用を抑えて遺言を残したい人
- 自分のペースで遺言を作成・修正したい人
- まずは簡単に準備を始めたい人
⚠️ 注意:書式不備による無効判決が実際に出た例もあり、専門家の確認を受けることが安心につながります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の存在を証明しつつ内容を誰にも明かさない方式です。秘密を守りたい場合に向いていますが、実務上の利用は少なめです。利用する際は、不備に気づかれにくいリスクを理解しておく必要があります。
特徴
- 内容は秘密にしたまま、公証役場で存在だけを証明してもらう方式(民法970条)
- 遺言者本人が署名押印した文書を封印し、公証役場に提出
メリット
- 内容を誰にも知られずに済む
- 自筆でなくてもワープロ等で作成できる
デメリット
- 検認手続きが必要
- 公証人も内容を確認しないため、不備があっても気づかれない
- 実務上は利用者が少ない
- 遺言の内容を生前は絶対に秘密にしておきたい人
- パソコンなどで遺言を作成したい人
- 特殊な事情があり、第三者に知られたくない場合
3つの遺言の比較表

3種類の遺言の違いを理解するために、費用・安全性・検認の有無などを比較表にまとめました。一目で違いを把握できるので、自分に合った方式を検討する際に役立ちます。重要なポイントを整理して確認しましょう。
| 項目 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成場所 | 公証役場 | 自宅など自由 | 自宅+公証役場 |
| 費用 | 数万円 | ほぼ不要 | 公証役場手数料 |
| 安全性 | ◎ | △ | △ |
| 検認 | 不要 | 必要(法務局保管なら不要) | 必要 |
| 利用度 | 高い | 中程度 | 低い |
💡 比較表を印刷して手元に置きながら検討すると、どの遺言が自分に合っているか判断しやすくなります。
選び方のポイント
遺言はそれぞれメリットとデメリットがあるため、自分の状況に合った方式を選ぶことが大切です。どの遺言が自分に適しているのかを整理する際に参考にしてください。
- 確実性を重視したい → 公正証書遺言がおすすめ
- 費用をかけず気軽に残したい → 自筆証書遺言(ただし法務局保管が安心)
- 内容を秘密にしたい → 秘密証書遺言(ただし不備リスクがあるため注意)
💡 実務的には「公正証書遺言」か「法務局に保管した自筆証書遺言」が多く利用されています。
FAQ(よくある質問)
遺言を検討する方からよく寄せられる疑問をまとめました。初めての方でも安心できるように簡潔に解説します。ここを読めば、遺言の基本的な疑問が解消できるはずです。
Q. どの遺言が一番多く利用されていますか?
→ 実務上は公正証書遺言が最も多く利用されます。信頼性と確実性が高いためです。
Q. 遺言作成の費用は誰が負担するのですか?
→ 基本的には遺言者本人の負担です。公正証書遺言の場合は財産額に応じた公証人手数料がかかります。
Q. 法務局の保管制度を利用するメリットは?
→ 自筆証書遺言の検認が不要になり、遺言の存在や内容を安全に保護できる点です。
Q. 遺言は何歳から作成できますか?
→ 遺言は満15歳以上であれば作成可能です(民法961条)。
Q. ワープロで作った遺言でも有効ですか?
→ 自筆証書遺言の場合は、ワープロでの全文作成は無効ですが、財産目録に限っては認められています。
Q. 遺言は何度でも書き直せますか?
→ はい、遺言は何度でも書き直し可能です。最新の日付の遺言が有効となります。
遺言作成前に確認すべき3つのこと(チェックリスト)
遺言を作る前に確認しておくべき基本的なポイントを整理しました。以下を押さえておけば大きな失敗を防げます。実際の準備に入る前に必ず確認してください。
- 誰にどの財産を渡したいか明確にしているか
- 書式や必要条件(署名・押印・日付)が正しく整っているか
- 相続人同士のトラブルを避けるため専門家の確認を受けたか
まとめ
遺言は大切な意思表示であり、後のトラブルを防ぐためにも自分に合った形式を選ぶことが重要です。信頼性と安心を求めるなら公正証書遺言、手軽さを求めるなら自筆証書遺言、秘密性を重視するなら秘密証書遺言といったように、自分の状況や希望に合わせて選びましょう。最後にもう一度確認ですが、遺言は早めに準備することが何より大切です。
特に「遺言の種類の違い」や「遺言書の選び方」を理解し、早めに準備することが大切です。トラブルは突然訪れるため、備えておくことが家族を守る第一歩となります。
👉 遺言作成を検討している方は、司法書士や弁護士など専門家に相談することで、安心して手続きを進められます。



